はるの独り言

最近思ったことを書いていきます。

目から鱗。

はじめに

どうもみなさん、こんばんちわ。

あっついですね。今日ようやくテストが終わって夏休みに突入しました!
そんなテストが終わって眠いのに、20歳になって初めてとても良い方に出会えたのでその人について書いていきたいと思います。

文章の試みとしては、アニメと違って日記なので極力、物語っぽくアレンジしていきたいと思います!

目から鱗。

 テストが終わって、友達と昼ごはんを食べに行った。

エアコンの効いた学食で、食事を取っていると心地よい冷風と昨日の寝不足がじわじわと眠気に変わっていった。

私は研究室にプリントを提出する必要があることを思い出し、慌ててかばんにプリントがあるかを確認した。あった。

「ごめん!これ出しにかなきゃだから、先に帰ってて!」

友達は眠そうに頷いたので、急いで研究室まで走っていった。ガラス張りの研究室のドアから中が覗けるので、部屋に教授がいるか確認した。

教授の姿は確認できなかったが、中に一人の男性がいたので、ここで待たせてもらえるように頼むことにした。

「すみません、教授は何時に帰ってこられるでしょうか…。」
「1時半ぐらいだと思うよ。その間、ここにいても問題ないよ。」

了解を得たところで、軽い会釈をしてソファに腰を下ろした。

「コーヒー飲む?」

その男性は、コーヒー豆の袋を私に見せるようにして聞いてくれた。断る理由がないと思い、ぜひ頂きます、と言った。

ブラックコーヒーだった。砂糖とミルクがないと飲めないわけではないが、あったほうが個人的には嬉しかったがわざわざいう程でもなかったし、言わずに飲んでみた。

「これ美味しいですね。」

思わず言ってしまうぐらい美味しいブラックコーヒーだった。

「ね、コーヒー豆から作ると美味しく感じるよね。」

そういうものなのかと思いながら適当に首肯して、ずずずっと飲み干した。

研究室には沢山、私が読みたがる本が本棚にびっしり並べられていた。

「この本読んでも大丈夫ですか?」
「全然問題ないよ。」

面白そうな位相の本があったので手にとってみた。パラパラして眺めてみたけど相変わらずよくわからないなあ。

「君、数学好きなの?」
「得意じゃないですけど。」
バイトとかしてるの?」
「情報ベンダーっぽいことはしてますよ。」
「ホント?実は僕はここに来る前までは金融系の会社に働いていたんだよ。」

私の好奇心スイッチがONになった。

「お話きかせてもらってもいいですか…?」
「僕で良ければ。」

そこから私はずっと延々と質問を投げていた気がする。ノンストップで。

まず、どんな業務内容だったのか聞いてみた。銀行のサービスを作るらしい。当時の給料も聞いてみた。最高年収900万らしい。

銀行のサービスというのは、一般的なWebサービスと違って、100点のモデルを考える必要があるらしい。ところが、Webサービスは上限がない。

つまり、200点だったり300点だったりを取っても構わない。そういうことを聞くと銀行のサービスのほうが劣ってるように聞こえるがそういうわけではない。

銀行のサービスは100点満点で、欠陥があるごとに減点方式で減っていくらしい。安全が担保されている必要があるからこそ、銀行のサービスは常に満点である必要がある。

そんな話聞いたことがなく、私はとても興奮した。

「なんで、そんな給料が良いんですか?」
「実はエンジニアとしてシステムを構築してるんだけど、システムを作ってるからこそ営業マンより自分のほうが顧客に上手に説明できると踏んで、自分で顧客を捕まえてきてたんだよ。」
「なるほど、実力でどんどん給料を上げていったわけですね。」

その男性は特に偉そうな素振りも見せずに頷いていた。

話は二転三転して「私、働きたくないんですよ…専業主婦目指そうかなって思ってるぐらいなんです。」ということを打ち明けた。

「実は僕も、学生の頃は全く働くつもりなかったんだよ!働く楽しさを知ってしまったからな…」
「どういうことです?」
「僕も学生の頃『社畜は嫌だよなあ。自分の時間ぐらい自分で管理できるようになりたい』とか言いながら、働く気は起こらなかったんだけど、いざ就職して働いてみると働くことで精一杯で、遊ぶ時間なんて全くないの。」
「え?それダメじゃないですか。」
「それがさ、自分たちの仲間でプロジェクトを進めて、実際お金取ってきてサービス作ってって忙しくしてると、一日に残された休息に何しようかってなるんだよ。その休息で全力で遊ぶからこそ、ストレスもなくなるし仕事も頑張ろうって思うんだよね。」

バイトはしたことがあるが、正社員になったことがない私にはなかなか理解し難い社会だと思った。

「学生のころ、ずっと時間あったのに『働いたら時間がなくなる』なんて思ってたけど、働いてるほうが遊ぶ時間に対しての密度が変わるんだよ。全力で仕事した後に全力で遊ぶんだから学生の頃みたいにダラダラ楽しんでたのとワケが違うってワケ。」

なんとなく言っていることがわかってきた。

「ってことは入社したころからずっとイケイケだったんですか?」
「そんなことないよ。最初の4年間はずっと怒られっぱなしだよ…」
「話を聞いている感じ、要領がいい方に見えますけど?」
「自分でも要領のいいほうだと思ってたさ。けど、働いてみると先輩たちのほうがずっと凄いし、ずっと怒鳴られてたよ。」

私は怒鳴る大人が大嫌いだ。感情に任せてキレる人は幼稚だから。

「キレる人って嫌ですよね。」
「そんなことないよ。場合によっては必要なんだよねこれが。」
「つまり?」
「こういうエピソードがあるんだけど、ある取引先の顧客が、僕の先輩に対して、こういう銀行のサービスを増やしてほしい、と頼んだらしいんだよ。先輩は、その機能は既にこの機能によって実現することができるんです、という説明をしたんだけれど、いやいいから黙って作れって言われたんだよ。先輩も頑固者だから、きちんと作れと言われた仕様を実際作った機能で実現できることを言ったんだけど、顧客が最後に『お前が論理的に何を言おうが、俺には権力がある。だまっていうことを聞け』って言ったらしいんだよ。そしたら、先輩感動しちゃったらしく。」

その男性は苦笑いを浮かべながら言った。
権力を振りかざすのか。暴力を振りかざして黙らせる小中学生やアメリカっぽいなあと思いながら続きを聞いていた。

「その時、先輩は悟ったらしいんだよ。ある一定の凄い人間には、論理的なしゃべり方、感情論、政治的な権利権力、などが会話のアイテムとしてどうやって、自分に有利に話をすすめることができるか分かるって。幼稚な人間は、論理的にしか人を論破することしかできないってわけ。これが社会人。」

なるほどなあと思いながら聞いていた。上手くキレる方法があるということか。

「僕は、商談でわざと負けることもあるよ。」

この人の話はとても興味をそそるような話ばっかりだ。

「どういうことですか?」
「営業先の顧客に対して、プランAとプランBがあることを提示して、本当はプランAを勧めたいんだけど、あえて自分はプランBを勧めるんだ。けど、どう見てもプランAのほうがwin-winだから、顧客はプランAを採用したいという話になるんだけど、あえてそこで話し合いをすることで、そのあと相手の意見を立てながら、折れることによって、負けて勝つということができるんだよ。」

最初何を言ってるかわからなかったが、商談相手を如何にして気持よく自分の土俵に上げらせることができるかということが重要らしい。

他にもその男性がどのようなことを気にしながら計画を立てたりしているのか聞いてみた。

「ビジネスモデルっていうのかな?PDCAって知ってる?Plan Do Check Actつって、計画 実際やる 確かめる 調整する、ってことなんだけど、こういうことを毎日毎日繰り返すことが重要だよ」
「あれですか?無理なプランを建てずにがんばる、的な?」
「ここでいうプランは計画なんだけど、もっと自分の生活にとってルーチンワークとして動かすできることを定めるのがいいよ。」 「なるほど。」
「けど、僕はフレームワークというものが嫌いでね。なんでもかんでも当てはめようとするから失敗することもあるってもんでね。本当に大切なのはコミュニケーションを取る時間を作るルーチンワークなんだよ。」

世の中で提示してくる単なる一つのビジネスモデルの本意をその人は知っていた。実際働いて、実際使って、実際批評して。私は、理解してるつもりになってることも自覚してるし、おそらく本当には理解できてない。私はこの時、実際働かなきゃと思った。

「他にも、目標の決め方も結構重要なんだ。まず、今どうしたいかという目標と、現在自分がどういう状況であるかという把握と、そのためにどのようなパスを通ればいいかという勉強などがあるんだよ。そういうものは目的の後ろから少しずつ考えていったり、チェックポイントとか設けるとより意識的にできるようになるよ。」

なかなか肝が座ってる方だと思って、会社で働くことで劣等感を抱いたりしないか聞いてみた。

「僕は自分の部署で、あるシステムを理解するように言われた。けど、同僚は新しいフレームワークとかに興味持って、僕が担当している少し古めのシステムに全然興味を持たなかった。けど、僕はこのシステムをありとあらゆるところまで知って、どんな質問をされようとも絶対答えられる、アイツなら絶対答えられる、というような人になろうって思ったんだよね。そうしたら、周りと違う自分が客観的に見えて、劣等感とか感じなくなったかな。」

「あと、やりたいことって沢山あったりするわけだけど、僕はそのとき同僚みたいによそ見をしなかった。自分のやらなきゃいけないことだけに集中するようにした。」

「私はどうしても、今やらなきゃいけないことがあったりするのに、本能的に違うもっと難しいことをやろうとしちゃうんですよ。これは良い意味じゃないけど、基礎を中途半端にして難しい方に目移りしてしまうっていう意味で、本当に自分の弱さに情けなさを感じます。」
「はは、実は僕も学生の頃はそうだったかもしれない。だって自分が勉強してることは誰に強制されてるわけじゃないからね。」
「そうなんですよね。」
「あ〜、今言われて思ったけど、だから会社に入って良かったって思ったかもしれない。」
「えっと…つまり?」
「だから、会社に入れば絶対実績を出さなきゃいけないわけだよ。だから、今やらなきゃいけないことっていうのが明確にあれば、確かにもっと興味あるものがあるかもしれないけど、一回一回のタスクを終わらせて満足してっていうのが楽しかったのかもしれない。」

この人は、私と似た考え方をしているが実際社会に出て社会の荒波に揉まれて形成できた人格みたいなものがあると思った。

またそこから話が二転三転して、クオンツで儲けてる人って実際いるもんなんですか?と聞いてみた。

クオンツって結構スリリングじゃないですか?儲かるもんなんですかー?」
「僕は一回彼らの部屋に入ってみたけど、各国の時計、6枚以上のディスプレイ、何台もの電話、とかすごい部屋が特殊でさ。誰も入って行けない雰囲気だった。儲かっていればどんな態度しててもいいし、大損したときは死んで償うんだぜ」

私は冗談かと思って笑う素振りを見せた。しかし、そうじゃなかった。

「これ言っていいのかな…」
「ん?どうしたんですか?言ってくださいよ。」
「僕らの金融系ビルの一階って病院みたいに大量のベッドがあるんだよ。クオンツで精神病んでしまったり、普通に疲れてぶっ倒れたりした人のためにあったりするんだよ。平均的に一つの会社で一年に3人ぐらい死んでしまったりするんだぜ。」
「つまり、命を引き換えに錬金してるってわけですか…」
「そうだし、おそらくみんな最初僕らと同じような人間だったのに、4,5年ぐらいで『命より金でしょ』って平気で言う奴が増えてくるんだ。嗚呼、あとそういう人たちって1年で1日だけでも休みがあれば十分だって言うんだぜ?」
「笑えないですね…」

笑えないですねと言いながらお互い苦笑いをしてみせた。

一年前にクオンツをやってみたいという話を友達にしたとき、友達は、なんて恐ろしいことを…、的なニュアンスを含むような言い方をしていた。その友達の親は金融系の会社の人だった気がする。多分知っていたんだなこういうことを。

その男性は、なんでも「とりあえずやってみれば」ということを言ってくれた。私に死ねと言ってるわけではないこともわかる。人生経験をしろと言ってくれているのだ。

私は人生経験として、株とかFXとかもやってみたいという話を振ってみた。

「僕はね、10万溶かしたらやめるって決めて、実際10万溶かしたからすぐやめたよ。」
「あっ…ああ…。」
「僕個人の意見として、トレーダーの所持金が1億円でない時点でその人は貧乏トレーダーだしやるべきじゃないと思ってる。況してや、学生なんかもっとやるべきじゃないと思ってる。」

なんとなく二十歳になったらこういうこともやっていきたいと思ってたから、苦渋の決断を迫られているような感覚になった。

「けど、これは僕が実際経験して言ってることなんだよね。」
「だから私も一度経験したほうがいいと、ということですかね?」
「そういうこと」

その男性は軽い笑みを浮かべて、続けた。

「それにさ、君も別に技術力がないわけじゃないんだし、実際友達と一緒になにかやってるわけじゃん?それだったら、そっちに力注ぎなよ。絶対ソッチのほうが将来役に立つし。何より、わざわざ自分と違う畑を耕そうと思うと結構大変だし、コストに似合うだけの成果が出るとはなかなか思えないんだよね。」

よそ見をしないで頑張ろうと思った。

私はこの人を模倣するわけじゃないけど、真似できたらそれはそれで良い人生になるんじゃないかと思った。

私は今日何枚も目から鱗を落とした。